製パン工場の量産ライン
発酵・分割・焼成は専用設備が担い、ロボットが入るのは原料袋の投入、天板まわりのハンドリング、包装機への供給、箱詰め・パレタイズ、搬送です。国内の製パン工場の公開事例は少なく、海外の製パン工場と国内の近接業種(菓子・米飯・飲料)の事例で補っています。
全9工程のうち6工程に、ロボットへ置き換えられる作業が13件あります。

工程の流れ
工程を押すと、その工程の作業へ移動します。
工程の出典:厚生労働省 製パン 職業能力評価基準 関連資料 / 福岡労働局「今月はパン職人」 / 大林組 製パン工場(施設計画)
工程ごとの置き換え作業
人が今やっている作業のうち、ロボットが担っている実例があるものを工程ごとに挙げました。右のリンクから候補機種と導入実績へ進めます。
- ロボット化
原材料受入・保管
小麦粉・イースト・油脂・糖類を受け入れる。主原料はサイロで、副原料は袋で保管し、前日までに計量しておく。
- 国内導入済み原料の倉庫→製造エリア搬送B-5 搬送・入出庫工場内工程間搬送
サントリー 大阪工場(飲料・近接事例)× Phoxter。重量物原料を AMR で搬送し、フォークリフト動線と交差しない設計(2025-09)。
- ロボット化
計量・仕込み(ミキシング)
配合材料をミキサーで練り上げて生地をつくる。袋原料の開封・投入は人。練り具合・温度の確認も人。
- 海外実績あり原料袋(25kg)のデパレタイズ→開封→ホッパー投入B-1 原材料投入・供給原料投入・マシンテンディング
双日マシナリーが扱う BYR「自動開袋装置」(食品原料対応、デパレタイズ 120 袋/時)。AZO(ベルギー)は粉乳メーカー向けに密閉型ロボット+AI ビジョンで 25kg 袋を開袋機へ投入、把持成功率 95%。
- 国内導入済み段ボール開梱→内袋取り出し→カット→投入→空箱片付けB-1 原材料投入・供給原料投入・マシンテンディング
キリンビバレッジ(飲料・近接事例)× ファナック。ロボット 3 台で原料茶葉(最大 25kg)の投入を全自動化。年間 1,870 時間(投入)+521 時間(計量)を削減。
- 専用設備
一次発酵
生地を発酵室で一定の温湿度で発酵させる。
発酵室が担う工程で、ハンドリング作業がない。
- 専用設備
分割・丸め・ベンチタイム
分割機で一定重量に切り分け、丸め機で丸め、中間発酵室で生地を休ませる。
分割機・丸め機・中間発酵室という専用機が高速処理する。ロボットアームが介在する余地はほぼない。
- ロボット化
成形・天板載せ
手や成形機で形を整え、型や天板に収める。天板やボードの取り出しと生地の整列は人。
- 海外実績あり台車からの天板・ボードの取り出し、クッキングシート敷き、生地の天板整列B-1 原材料投入・供給原料投入・マシンテンディング
Malzers(ドイツ)× ADM Automation。安川 MOTOMAN GP180(天板 400 枚/h)、MPK2F(シート敷き)、MPP3H×4 台(生地の天板載せ)。食品用グリス・洗浄対応塗装。
出典:Yaskawa 事例
- 海外実績あり生地載せ済み天板の冷凍機からの取り出しとラック台車への積み込みB-5 搬送・入出庫工場内工程間搬送
Görtz(ドイツ)× ADM。安川 MOTOMAN GP180 FGG×4 台、層グリッパーで最大 6 枚同時、1,000 枚/h(2024-11 稼働)。
- 専用設備
最終発酵(ホイロ)・焼成
型・天板ごとホイロで発酵させ、オーブンで焼く。温度・時間の設定は人が判断する。
ホイロとオーブンが担う。設定の判断は人。
- ロボット化
脱型・冷却
焼成品を型・天板から外し、温湿度管理された冷却工程で冷ます。
- 海外実績あり焼成後の天板・型から製品を取り出す(ロボット式デパンナー)B-2 組立・加工ロボットアーム:組立・協業作業
GEA「Robotic depanner」。ニードル・吸着・グリッパで直接ピックし次工程コンベアへ。ヘッド交換で食パン・クロワッサン・ケーキに対応(製品ページ)。
- ロボット化
スライス・包装
食パンはスライスして袋詰め、菓子パンは個包装する。包装機への供給と包装後の集合は人。
- 海外実績ありオーブン出口の製品をピックして包装機へ供給、包装後のマルチパック化B-1 原材料投入・供給原料投入・マシンテンディング
ULMA Packaging「Baked goods – Automated line」。多関節ロボット 2 台がオーブン出口から製品を取り横ピロー包装機へ、別のロボットが集合してマルチパック包装機へ装填。
- 国内導入済み焼成品の形状不良・欠け・異物の AI 画像検査B-3 検査・品質管理検査・品質確認
シルビア(ドーナツ製造ライン・近接事例)× センスシングスジャパン「ZENAI」。180 個/分で検査し、熟練者の目視負荷を軽減。
出典:AIsmiley
- ロボット化
箱詰め・パレタイズ・出荷
包装品を番重や段ボールに詰め、消費期限ラベルを貼り、パレット積みして出荷する。
- 国内導入済みパン箱単位の出荷ラベル貼付と、パン箱の供給・排出・積み上げB-4 梱包・パレタイズパレタイズ・積卸し
タカキベーカリー つくば工場 × サトー。安川 MOTOMAN-HC10(協働)がパン箱 4 種を判別して供給・排出、MOTOMAN-MPP3S が 3,000 枚/h 貼付。56 品目・約 23,000 個/日、作業者 5 名→2 名、投資回収 1.8 年。
- 海外実績あり袋詰め済み食パン・ロールパンをコンベア上で追従ピックし、出荷コンテナへ投入B-4 梱包・パレタイズパレタイズ・積卸し
フィンランドの大手製パン工場 × KINE Robotics。Stäubli TS2-60 スカラ+ToF 3D カメラで透明袋を認識。25〜30 袋/分、従来は作業者 2 名。
出典:Zebra 事例
- 海外実績あり焼成済みペストリーのトレー詰め、包装済み食パンの箱詰めB-4 梱包・パレタイズパレタイズ・積卸し
Dulcesol(スペイン)。ABB IRB 340 パラレルリンクで 4 個同時にトレーへ(100 個/分)、IRB 1600 が食パン 7 斤を同時に箱詰め。
出典:ABB 事例 (PDF)
- 国内導入済み小型協働パレタイザーでのケース積み付けB-4 梱包・パレタイズパレタイズ・積卸し
エムケーチーズ(神奈川・近接事例)に Closer「Palletizy」2 台。最大 10kg ケースを 700 個/日以上、導入作業 1 日。
- 海外実績あり包装機出口から倉庫への完成品パレット搬送B-5 搬送・入出庫倉庫内搬送
Pimad(Grupo Bimbo 傘下の製パン)。ABB スタッカー型 AMR 2 台で 1 回 4 パレット、WMS・ERP 連携。
一覧
| 工程 | ロボット化できる作業 | 段階 | 用途ページ |
|---|---|---|---|
| 1. 原材料受入・保管 | 原料の倉庫→製造エリア搬送 | 国内導入済み | 搬送・入出庫 |
| 2. 計量・仕込み(ミキシング) | 原料袋(25kg)のデパレタイズ→開封→ホッパー投入 | 海外実績あり | 原材料投入・供給 |
| 2. 計量・仕込み(ミキシング) | 段ボール開梱→内袋取り出し→カット→投入→空箱片付け | 国内導入済み | 原材料投入・供給 |
| 5. 成形・天板載せ | 台車からの天板・ボードの取り出し、クッキングシート敷き、生地の天板整列 | 海外実績あり | 原材料投入・供給 |
| 5. 成形・天板載せ | 生地載せ済み天板の冷凍機からの取り出しとラック台車への積み込み | 海外実績あり | 搬送・入出庫 |
| 7. 脱型・冷却 | 焼成後の天板・型から製品を取り出す(ロボット式デパンナー) | 海外実績あり | 組立・加工 |
| 8. スライス・包装 | オーブン出口の製品をピックして包装機へ供給、包装後のマルチパック化 | 海外実績あり | 原材料投入・供給 |
| 8. スライス・包装 | 焼成品の形状不良・欠け・異物の AI 画像検査 | 国内導入済み | 検査・品質管理 |
| 9. 箱詰め・パレタイズ・出荷 | パン箱単位の出荷ラベル貼付と、パン箱の供給・排出・積み上げ | 国内導入済み | 梱包・パレタイズ |
| 9. 箱詰め・パレタイズ・出荷 | 袋詰め済み食パン・ロールパンをコンベア上で追従ピックし、出荷コンテナへ投入 | 海外実績あり | 梱包・パレタイズ |
| 9. 箱詰め・パレタイズ・出荷 | 焼成済みペストリーのトレー詰め、包装済み食パンの箱詰め | 海外実績あり | 梱包・パレタイズ |
| 9. 箱詰め・パレタイズ・出荷 | 小型協働パレタイザーでのケース積み付け | 国内導入済み | 梱包・パレタイズ |
| 9. 箱詰め・パレタイズ・出荷 | 包装機出口から倉庫への完成品パレット搬送 | 海外実績あり | 搬送・入出庫 |
導入前の確認点
- 衛生管理ガイドライン:農林水産省「食品製造現場におけるロボット等導入及び運用時の衛生管理ガイドライン」(2024-04)への適合。HACCP 対応の導入手順と、食品対応ロボットが備えるべき機能が整理されている。
- 食品対応仕様:食品用グリス、洗浄対応塗装、気密性。生地に直接触れるロボットは「直接/間接接触」の区分と洗浄性を確認する。
- 透明包装袋の認識:袋詰め後のパンは 2D カメラでの位置検出が難しい。ToF 3D カメラで形状を取る方式に実績がある。
- 柔らかい製品の把持:吸着・ニードル・層グリッパー・ソフトグリッパーなど、製品ごとにハンドを選ぶ。
- 多品種対応:製パンは 100 種以上の品種が珍しくない。箱や天板の種類をセンサーで判別するなど、段取り替えの自動化が要件になる。
- 主原料の投入はロボットの対象外になりやすい:小麦粉はサイロと空気輸送で自動供給するのが一般的で、袋投入は副原料向け。
自社の工程で、どこから置き換えるか相談する
工程表を持ち込んでいただければ、置き換えやすい作業と候補機種、PoC の進め方を一緒に整理します。